私の子供の頃、すなわち1960年代は”紙”が今よりも貴重な存在でした。カレンダーやチラシの裏も使うよう言われたものです。省エネとか節約という観点だけでなく、物を大切にする習慣として当たりでした。食べ物を残さないのと同じく、紙の余白は徹底して使うように躾けられました。
食料品を買いに行けば、新聞の包装紙で渡されることも多かった時代です。
私が入社した会社の先代の社長は、新入社員への祝辞を読み上げる際に、チラシの裏紙を使っていたという話を会社の上司から聞いた事があります。その社長は政財界の要職を歴任した超大物で知られた人物です。新入社員の側からは紙の広告面がよく見えたとのことです。
プリンターで文書を大量に印刷するようになった今日、いらなくなった上質紙の裏面はかくも簡単に見捨てられ、時としてシュレッダーにかけられます。こんな時は日々罪悪感さいなまれることこの上ありません。出来るだけメモ用紙に使おうと努力はしますが、追いつかないのが現状です。
アメリカ型の消費経済にいつの間にかどっぷり使った感のある今日、物損の心を忘れないように原点に帰ろうと思います。
(写真はホテルニューオータニの昔の絵葉書より)
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