行政の責任 ソウル雑踏事故と知床遊覧船事故

 2022年10月31日に発生した韓国ソウルの繁華街・梨泰院(Itaewon)で起きた雑踏事故において、マスメディアが政府や警察の落ち度が指摘され、行政もそれを認めるに至りました。
 一方、同年11月1日のAFP=時事電によると、群集シミュレーションに取り組む英ノーサンブリア大学(Northumbria University)のマーティン・エーモス(Martyn Amos)教授はAFPに「警察の主な役割は一般的に、群衆整理ではないことを忘れてはならない」と注意喚起し、群衆整理を主に案内員が行い、警察は秩序の維持や犯罪に対処する形でのイベント開催は可能だと説明しました。

【解説】ソウル雑踏事故、これまでに分かっていること

 確かにハロウィーンに伴う雑踏事故を発生させたのは、イベントに関係する主催者側にも責任があると言えます。ただしその一方で、ソウル市の警察に事故の4時間前から11回に渡り通報があり、そのうち4回しか出動の記録がなかった点においては、行政の責任が問われて然るべきです。

 ところで2022年3月に発生した知床遊覧船事故においては、遊覧船の運行会社の責任のみがクローズアップされ、監督官庁である国土交通庁や、現場到着が大幅に遅れた海上保安庁の責任追及についてはどこかに消えてしまいました。遊覧船運行会社に対する杜撰な検査、指導体制の元に事故は発生し、さらに海上保安庁の役立たずの救助体制により犠牲者が増えてことについて行政への責任追求がなされて然るべきだと思います。
 

 韓国の雑踏事故についてソウル市長の呉世勲(オ・セフン)氏は記者会見で「市民の生命と安全に責任を負うソウル市長として今回の事故に対し無限の責任を感じ、深く謝罪する」と涙がらに述べました。

 知床遊覧船事故とソウルの雑踏事故はその発生状況や事故形態は異なると言え、行政の責任追求という点でメディアの姿勢と行政の対応が随分異なることを実感しました。


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