「男の服装術」落合正勝氏の名著

 日本においても西洋においても、社会生活を営む上での決まり事があります。そこには理由があるものもあれば、決まりそのものに意味があるものもあります。この決まり事を守ることは窮屈でもある反面、より洗練された生活を社会全体で気づくためには甘んじなくてはならないことがあります。

 近年、会社の社長がTシャツ姿で壇上でプレゼンをしたり、かつて半袖のスーツを省エネルックとした感覚に、私は強い違和感を覚える次第です。社長のTシャツ姿も新しいファッションという主張なのかもしれませんが、ファッションの定義を遡ると100年くらいの単位で語るべきものであり、安直にその方向性を変えることには懐疑的であるべきではないかと思います。何故ならクラシックなものはやはり優れているから続くのであり、また社会における決まり事は暗黙知として根付いているから秩序が保たれるのです。

 さて、今回ご紹介するジャーナリストであり服飾評論家でもあられた、故落合正勝氏の書籍は、男性のファッションの原点とあり方に迫る非常に深い内容を含んでいるため、成人男性、とりわけ社会に出て間もない若い方にはおすすめの書籍です。

 「ファッションとは流行を追うばかりでなく普遍的なクラシックがある」と主張し、服飾評論の世界に一石を投じた落合正勝氏の解説は、読み進めるにつれまさに目から鱗の思いが致しました。

 単に目先の流行を追うのではなく、服装の歴史を遡りながら、時代とともに薄皮を重ねるようにエレガントさを追求してゆく辛抱強さに美を見出したいものです。

男の服装術

男の服装術(カジュアル編)

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP