ネパール、ポカラでの航空機事故について

開港して間もない、ネパールのポカラ国際空港に着陸進入中のイェティ航空(Yeti Air)のATR72-500(機体番号9N-ANC)が墜落し、多数の犠牲者が出たとのこと。

 犠牲になられらた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 ネパール国内では航空機事故が非常に多く、EUは安全上の観点からネパールの航空機の乗り入れを禁止しているほどです。

 私は当初、ネパールで多い濃霧などの悪天候が原因ではないかと思いましたが、事故当時は視界も良く、風、気温ともに問題はなかったようです。

 機体は複数の航空会社を経由しているものの、2007年に最初の航空会社に引き渡されたとのことなので、プロペラ機としては、それほど古いとは言えません。もっとも整備がどの程度入念に行われていたかは今後の調査を待つ必要があります。

 事故当時、管制官は滑走路30への着陸を指示していたところ、パイロットは滑走路12への着陸を要求したとのこと。

 今回事故機が着陸しようとしていた空港は1月1日に開港したばかりの新空港で、墜落地点は前からあった空港と新空港の間の川沿いとのことです。地図と映像から推測すると、滑走路12へ左旋回しながらのファイナルアプローチの際に、何らかのトラブルが発生して姿勢を崩し墜落したように推測します。

 地上から墜落直前の機体を撮影した動画を見ると、やや不自然な機種上げ姿勢で左バンクを取っているように見えるので、この後に何らかの推力低下が発生してきりもみ状態に入ったのではないかと想像しました。

 何人かのプロパイロットのコメントにもあるように、エンジンの出力低下とそれに伴う失速の可能性は大いにありうるかとも思いました。あるいは昭和41年の全日空松山沖事故の際に推定原因の1つとして提示された、プロペラピッチに何らかのトラブルが発生したことも考えられるように思います。いずれにしても、ブラックボックスと機体の残骸調査が進めば事故原因は明らかになるでしょう。

 画像はFlightradar24による事故機の飛行ルートです。

 ニューヨークタイムズの記事によると、副操縦士のAnju Khatiwadaさんは、2006年にパイロットだったご主人を航空機事故で亡くし、それを機にご主人の夢を繋ぐためにパイロットを目指したとのことです。看護師の仕事を辞めてアメリカで訓練を受け、2010年にご主人と同じイェティ航空のパイロットになられたそうです。

 なおこのフライトを終えた後は、機長への昇格が待っていたとの情報もあります。

 機長のKamal K.Cさんの飛行時間は2万1900時間、副操縦士のAnju Khatiwadaさんも6400時間というベテランのコンビが操縦する旅客機が、天候が良好の中いきなり墜落するという事態は想像し難いものがあります。管制塔にはトラブルを告げるメッセージは伝えられず、突然何らかの不測の事態が起きたのではないでしょうか。

 なお事故機(機体番号9N-ANC)は昨年末に新空港開港に先立って行われたテストフライトの際に使用された機体のようです。以下はその時に撮影された動画のリンクです。

FIRST FLIGHT at Pokhara International Airport / Yeti Air / Historic Day for #Pokhara

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