台湾有事に備えるべき

ここ数年話題になっている台湾有事について、私の考えを以下に書かせていただきます。

台湾有事が起きないことを願うばかりですが、危機管理上は起きるという前提で準備する必要があります。
有事に備える防衛力の整備は、起きた時の準備であると共に、起こさないための準備でもあるのです。

(1)台湾有事が起きるのかどうか

 まず、台湾有事が起きるか起きないかについては99%起きると考えていいと思います。
 その理由は2018年に中国の習近平国家主席が終身で国家主席の座を維持できる憲法改正が行われたからです。

 今月16日に開かれる中国共産党大会において、習近平国家首席の任期が3期目に入りました。その中で台湾統一と、そのためには武力行使も辞さない旨の発言をしています。

2027年の4期目に入る前に悲願の台湾併合を実現することは、毛沢東を超えるための独裁者としての条件になります。ゼロコロナ政策への国民からの批判や、習近平が内心恐れる中国人民解放軍によるクーデターを阻止して終身政権を維持するためにも、台湾併合は必須の要件と言えます。

 従って、2027年秋までには台湾有事が起きると考えて間違いないと言えます。
 これは、2021年に米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン前司令官(退役海軍大将)が米上院公聴会で、「今後6年以内」に台湾に侵攻する可能性があると発言したこととも符合します。またフィリップ・デービッドソン前司令官は、2022年5月にもこの考えは変わっていないと発言しています。さらに多くの著名な政治学者、軍事評論家なども同じような意見を持っています。

 では、2027年までのいつ起きるかについてですが、中国人民解放軍の兵員輸送能力が十分なレベルになるのにあと4、5年かかると言われているので、2026、7年頃の可能性は高いと言えますが、一方で、経済バブルが崩壊した中国において、習近平が国内の求心力を高めるにはそれより早い2024年頃までに踏み切るのではないかとの見方もあります。ウクライナの例を見ても、開戦の時期は為政者しかわかりません。従って、今年の11月以降はいつ台湾有事が起きてもおかしくないと言えます。

(2)台湾有事が起きると日本はどうなるのか

 中国人民解放軍が台湾を攻める際には、台湾から半径200海里(約320Km)の範囲の制空権を確保しようとします。何故なら、台湾に船舶で上陸を果たすには、空からの攻撃をかわす必要があるからです。地図を開くとわかりますが、日本の宮古島あたりまでの尖閣諸島と先島諸島が攻撃の対象になります。日本の陸上自衛隊が、台湾に最も近い与那国と宮古島にそれぞれ2016年と2019年に陸上自衛隊の駐屯地が新設したのもそのためです。石垣島にも2022年度中に新設されます。

 台湾が沖縄の先島諸島に対して、電力・通信などへのサイバー攻撃に続き直接攻撃を始めると、先島諸島の陸上自衛隊の地対空ミサイルが中国軍の戦闘機やミサイルを迎撃、さらには航空自衛隊那覇基地から航空自衛隊のF -15戦闘機が緊急発進することになるでしょう。
 しかし現在の自衛隊の戦闘能力においては、尖閣諸島の奪還と先島諸島の防衛、さらには在日米軍の後方支援を両立することは困難と見られています。

 中国人民解放軍が尖閣諸島と先島諸島を制圧すると、台湾は東側からも攻撃を受けることになります。

 ここで問題になるのが、台湾と先島諸島に住む日本人の避難です。先島諸島では日本政府が避難用シェルターの整備を始めているようですが、島からの船舶や航空機による避難は時間的にも至難の業と言わざるをえません。ウクライナのように国境を超えて他国に避難することができないのが、島国である台湾と日本の宿命と言えます。日本と台湾は正式の外交ルートを持たない上、自衛隊と台湾の軍隊との連携も行われていないため、邦人救出は極めて難しい課題です。
さらに問題なのは中国本土に住む日本人の立場です。現在の中国共産党の規約では、中国に駐在する日本人は有事の際は日本を攻撃する側に回らなくてはならないのです。これは日本在住の中国人も同様です。

 以上は中国人民解放軍が台湾から半径200海里の制空権を掌握するという最低限のシナリオですが、軍事評論家の中には、奄美大島あたりまで、さらには長崎県の佐世保、神奈川県の横須賀なども初期の段階での攻撃対象になりうると予想する人もいます。

 中国人民解放軍が台湾への侵攻を始めると、先島諸島をはじめとする日本が戦場と化し、さらにマラッカ海峡から南シナ海に至るシーレーンが封鎖されるため、日本に石油や食料が届かなくなるという事態に陥ります。エネルギーや食料を輸入に依存している日本にとっては、戦火と同時に、生存するためのインフラを断たれることによる国家存亡の危機にさらされるわけです。迂回ルートを使うことは経済面からあまりに現実離れしています。

(3)どうしたら台湾有事を回避できるか

 台湾有事が起きたら日米同盟でアメリカが日本を守ってくれると考えている日本人は少なくないと思います。日米安保条約の英語の原文を読むと、決してアメリカが日本を守ってくれる条約にはなっていないことが理解できます。少なくとも米軍が日本を守るには米国の議会承認の手続きを踏まなくてはならず、しかも米国の世論がそれを許容するとは思えないからです。何故なら憲法9条に規定されてる専守防衛という概念を深く理解しているアメリカ国民は極めて少ないと考えられ、日本は自衛隊が守るべきというのが台湾有事の際の国際世論となりうることが大いに予想されるからです。

 そもそも台湾は米国本土からは太平洋を挟んではるか遠い場所に位置し、米国太平洋艦隊の母港であるサンジエゴから艦隊が駆けつけるとしても2週間を要し、その時は台湾侵攻の戦況はほぼ決定的になっていると考えられます。

 では、自衛隊の戦力をこれから増強することはできるのでしょうか。岸田内閣の元での防衛予算2%は現状では到底無理、しかも中国寄りの財務省の元で防衛予算を大幅に増やすことは至難の業と言えます。仮に予算が組まれたとしても戦闘機などの防衛装備は発注してから納品されるまで、4、5年を要し、今からでは到底間に合いません。

 次に台湾有事における日本防衛を人的な面から考えてみます。有事の際の陸海空の自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣です。現状の岸田文雄総理が果たして有事の際に適切な指揮を取ることができるでしょうか。さらには対中国外交では弱腰の林外務大臣、韓国贔屓の浜田防衛庁長官、そして石井昌平海上保安庁長官は制服組ではない文官出身という極めて脆弱な体制で、有事を乗り越えることはどう考えても無理に思えます。

(4)憂うべき我が国の現状

 日本政府は台湾有事の懸念が高まる中、マイナンバーカード、全国旅行支援など台湾有事に比べてば取るに足らないどうでもいいことを議論し続けています。
 メディアも台湾有事のニュースには触れはするものの、日本が極めて深刻な事態であることについてはほとんど報道しません。

 台湾有事の際に、果たしてウクライナのように国家元首がリーダーシップを取り、国民が結束して危機に立ち向かうことができるでしょうか。

 台湾有事は日本有事であると共に、米中戦争という恐らく史上最大規模の戦争に発展する可能性が極めて高いと言えます。今の日本は憲法9条の問題も含めて、台湾有事に備えるだけの準備が出来ているとはとても思えません。東日本大震災の際の原発のメルトダウンと同じく、事が起きてから慌てて対処して手遅れになることは目に見えています。
(5)平和憲法をどう考えるか

 憲法9条の改正議論が長らく続いています。私も憲法9条が有事に対処できるのであれば素晴らしい憲法の条文だと思います。しかし実際のところは有事の際の専守防衛というのはやられっぱなしになるということです。日本列島を核ミサイルをも跳ねかす巨大なドームで覆うようなことをしなければ専守防衛は実現できないのです。

 従って憲法改正を現実に対処するために実施し、有事の際の日本の防衛力を必要なレベルにまで引き上げる必要があります。日本は中国、北朝鮮、ロシアという独裁の核保有国に取り囲まれているという世界でも稀な地政学的に危険な場所に位置しています。核保有国同士であれば、相互確証破壊(Mutual Assured Destruction, MAD)により核による抑止力が働きます。すなわち2つの核保有国のどちらか一方が、相手に対し先制核攻撃をした場合、もう一方の国家は破壊を免れた核兵器により報復することが確実なため、抑止力が働くのです。

 日本はアメリカの核の傘に入っていると言われています。しかし日本が核攻撃を受けた際にアメリカが核で反撃したならばアメリカ自体が核攻撃を受けるわけですから、アメリカの核が日本を守ってくれることはあり得ません。

 以上の通り、台湾有事は日本にとって戦後の最大の危機と言えます。無能無策の日本政府に頼らず、サバイバルする術を国民ひとりひとりが考える時期に来ていると思います。

(画像はGoogle Mapより引用)

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