ガウディが見ていた理想の社会| ETSURO SOTOO | TEDxNihonbashi

 アントニ・ガウディの代表作、サグラダファミリアの主任彫刻家である外尾悦郎氏がガウディの世界観を深くそしてわかり易い言葉で解説しています。
 外尾悦郎氏がガウディの思想を受け継ぐ彫刻家であると共に、人への深い愛情と自然への畏敬の念を兼ね備える哲学者でもあることを感じさせてくれる感動の動画です。

 外尾氏の講演を私なりの言葉で要約させていただきます。

 人のために役に立つこと、人を幸せにすること、それは人に愛情があるからです。教会のミサは言葉で人の魂を清め、満たし、成長させます。日本語の「言葉」は目には見えない葉っぱで、自分の中からエネルギーを込めてお伝えすると、その魂がやがて実るかもしれない、同じようにサクラダファミリアは芸術作品ではなく、私たちの魂が実る道具なのです。

 ガウディの名著「自然」は人は創造しない、発見するだけであることを説いています。人ができることは創造ではなく、自然を観察することと発見すること。観察し発見するためには愛情が必要で、人にとって役に立つのではないかと考える視点が大切ということです。

 ガウディが考える本当の合理性とは、自然は裏切らないことを利用するということです。自然の中に全ての答えがある、だから美しい。ガウディの建築は引力に逆らっていないので柱が微妙に傾いている。引力が助けて支えてくれる。懸垂曲線を石で作ることにより、引力が味方になってくれるのです。

 すなわちガウディは昨日までは建築にとって最大の敵だったものを最大の味方にしたということです。敵だと思っていたものを味方にすることができる可能性が人類に秘められていることをガウディが建築を通じて証明してくれたのです。 例えば窓の作り方は光が知っている。太陽が東から西に昇ると鼓のような形になるので、その形にすれば構造的に強くなる。煙突は誰に頼むのか、空気と風に頼めばいい。風を巻き込む形を作り、気圧を変えて中の煙を吸い出す。

 ガウディの子供のような思い、人を幸せしたい、自分も幸せになりたい、そのためには人を幸せにするしかない。そしてそのためには、与えられたものをフルにダイナミックに利用する。 外尾氏は現代のエコロジーという言葉では弱い、むしろガウディが説く本当の合理性が大切と考えているとのことです。 

さらにガウディは私費でサクラダ・ファミリアに隣接した学校を作りました。外尾氏は135年に渡る工事で死亡事故がない秘密がそこにあるのではないかと考えたそうです。職人が子供を連れて学校行くと、子供を連れて帰らなくてはならない、だから仲間と喧嘩はできない。子供が学校に行ってもっと良い生活ができるかもしれないという希望を持ちながら仕事ができる。仕事の報酬は将来への希望と子供の教育にあるということです。しかもその学校で教えられていたのは、科目ごとの教育ではなく、総合教育だったとのことです。

 私は2022年10月上旬、バルセロナでガウディの作品を10箇所以上見学しましたが、そこで感じたのは童心と優しさでした。今回外尾悦郎氏のお話をお聞きして、その理由が私なりにわかった気が致しました。
 外尾氏は講演の最後で、「夢を見ましょう、そして本当の合理性を探しましょう、この3000年紀を生きるためには、ガウディがたくさんヒントを残しています。ぜひ信じて違う世界を、そしてこのTEDxを使ってみんなの知恵を集め、このガウディと同じように人を幸せにするために生きていきましょう」と結んでいます。

なお外尾悦郎氏の講演の正確な内容は、以下の動画をご覧ください。


ガウディの集合住宅、カサミラ(Casa Mira)の屋上の煙突。

サクラダ・ファミリアに隣接したガウディが私費で作った学校の当時の様子。

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