ケムトレール陰謀論の真偽について

ケムトレールという現象を信じている人たちが世の中に少なからず存在します。ケムトレールとは、空中に長く滞留する飛行機雲の中に、有害な化学物質あるいは生物兵器が混入され散布されているのではないかという説です。

 英語のchemical(化学的な)とtrail(痕跡)を合わせて造語です。

 私はこれは単なる陰謀論で、極めて根拠が薄いと考えています。その理由を以下に書かせていただきます。

 飛行機雲の滞留時間は気象条件によって長くも短くもなります。空気が乾燥している場合は短く、湿っている場合は長く空中に残留します。従って、飛行機雲が長く滞留することをもって怪しいと断定するに値しません。

 さらに航空機の排出物が時間差で核化することがあり、航空機が通過したすぐ後ではなく飛行機雲が時間差で発生することもあります。

 次にこの飛行機雲の中に何らかの化学物質が混入されているかどうかです。飛行機雲に化学物質を混入するためにはジェットエンジンの排気タービン付近に化学物質を放出するためのノズルが必要です。さらに化学物質を蓄えるためのタンクを機内に装備する必要があります。ケムトレール陰謀論者は、旅客機の機内写真のうち座席を取り払いタンクを装備した写真などをもって証拠写真として提示しているようです。しかし、旅客機の機内の座席を外して、バラストウエイト用の水タンクを装備したり、あるいは測定機器を搭載することは普通に行われています。航続距離の短い機体の長距離フェリーなどでは、機内に燃料タンクの増槽を装備することもあります。

陰謀論者は、化学物質を放射するノズルの写真や、座席を取り払った機内のタンクなどに化学物質が混入されている証拠を提示することなく、座席を取り外した機内写真だけで陰謀論を展開しているのです。

 さらに地上付近で高空から散布された化学物質が測定されたかについてです。こちらも科学的なデータがありません。

  化学物質が実際にサンプリングされたという話も聞いたことがありません。
先行機の飛行機雲の中を後続機が飛行することはよくあるので、後続機が吸い込んだ空気の中に化学物質が混入されれば、後続機の高性能のエアフィルターでトラップされるのですぐ見つかるはずです。

 ケムトレールの存在は、該当機の飛行経路の下で大気のサンプリングを行い成分を分析するか、該当機が到着した空港で機体に化学物質を排出するノズルがあるかを調べることで簡単にできるはずですが、それすら提示されたことがありません。
民間機であればFlightradar24で到着空港は容易に識別できます。

 以上の理由により、私はケムトレールはなんら根拠のない陰謀論だと考えてます。そもそも高高度で化学物質を拡散することで、地上にどれほどの効果を及ぼせるのでしょうか。もし飛行機雲を疑うのであれば、自動車の排気ガスや工場の排煙など、すべてを疑いなおかつ検証すべきです。

  飛行機雲の長時間の滞留は気象学上ありうる上、航空機が座席を外して飛行することは珍しくないにも関わらず、頭からこのような決めつけをすることは極めて非科学的と言えます。

 陰謀論者の多くは、初めに陰謀論ありきで現象を繋ぎ合わせることで辻褄合わせをすることが多いようですが、科学的に検証すると実に幼稚なストーリーが展開されていることが理解できます。

 科学を超えたものがあると反論する陰謀論者も少なくありません。私も科学を超えたものの存在は信じておりますが、ケムトレールのように物理世界での陰謀論を説くのであれば、物理世界における矛盾の指摘を科学的に解消できなくてはなりません。

リスボンの上空は多くの飛行機雲が交差します。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP