発達障害という名の個性

ある大病院の精神科部長をされていた先生が、自分もひょっとしたらアスペルガーじゃないかと冗談まじりに語ってらっしゃいました。現代は新しい病名が次々と作られ、患者さんにレッテルを貼り、ひどい時は過剰な薬物投与をされてしまう時代です。

その先生は精神疾患を癒すのは必ずしも精神科医とは限らず、お友達でもいいし、趣味でもいいし、お料理でも何でもいい、その中のひとつに精神科があるんですよとおっしゃっていました。ところが眠れないと言うとすぐ睡眠薬を処方し、心が塞ぐと訴えると抗うつ剤を処方し、根本原因に向き合わない医師が少なくないことを憂いていらっしゃいました。

 そもそも「発達障害」はNeurodevelopment Disorderを日本語訳したもので、原語の意味とは少々ニュアンスが異なるのですね。すなわち障害ではなく、大勢の人との相対的な神経発達のずれと言う意味です。日本の医学会ではこの神経発達のずれを「神経発達症」と呼ぶことを提唱しているそうです。「障害」ではなく「症」がより言語の意味に近いと言うことです。ただし、行政用語で使う「障害」とした方が患者さんに有利になることもあるので、そこに配慮した面もあるようです。
 
 この分野の専門家によるとジョン・F・ケネディ、アインシュタイン、エジソンなども発達障害の傾向を指摘されているそうです。むしろ彼らはその特性を生かして社会的に大きな足跡を残しています。日本は発達障害大国と言われていますが、他の国では許容されるレベルの差が、日本では問題にされがちな社会的背景が原因ではないかとの専門家の意見があります。その一方で発達障害と感じる方が、そのずれによって生きずらさや、社会での居心地の悪さを体験しているのであれば、何とかしてあげなくてなりません。
 
 そんな中で、最近『経済は「競争」では繁栄しない』(信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学)(ポール・ザック(Paul Zak))という本に出会いました。社会の繁栄は天然資源や勤労意欲ではなく、人と人との信頼と共感であるという主張を、愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」から解明しているユニークな本です。共存共栄の大切さを経済学と心理学から解明したユニークな書籍と言えます。 

 個を尊重し多様性を認め合う、誰にとっても生きやすい社会」を作ることの重要性をしみじみと実感致します。
      
 私自身、振り返ると若い頃から今日に至るまで随分と社会との「ずれ」の多い人間でした。そして思うのは、このずれを許容してくれた会社の上司や同僚、友人たちの寛容さ、懐の深さを感謝せざるを得ません。その恩に報いるためにも、自己実現ならぬ自他実現のマインドを常に心に宿したいと思います。

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