運の良さと個の時代

 松下幸之助翁が社員を採用する際に、「あなたは運がいいですか?」と問いかけて、運がいいと答えた若者を採用したという話を聞いたことがあります。
 私は運の良し悪しは、多かれ少なかれ先天的な要素があるのではないかと思い、松下翁の問いかけの意図に少々疑問を持っていました。

 ところが先日、松下翁と直接接した経験のある松下政経塾出身の方からこの件について踏み込んだ説明をいただきました。
 松下翁にとって運というのは、不動の精神で最後まで諦めずに突き進むことで養われるという意味だったようです。
 これは「失敗したところでやめてしまうから失敗になる 成功するところまで続ければ それは成功になる」という松下翁の言葉とも符合します。
 近年の日本の世相を見るにつけ、政治についても経済についても何か諦めの空気が醸成されているような気がしてなりません。 
日本経済は相変わらず停滞していますが、一方でホンダジェットの売り上げが世界ナンバーワンになるような出来事も起きています。
 国産初のジェット旅客機MRJの開発遅れとは対照的です。
この点について法政大学大学院の真壁昭夫教授は「ホンダは個人中心、三菱重工は組織中心で開発を進めてきた」と指摘しています。
時代は明らかに集団から個の時代に緩やかに変化しているように思います。
集団の社会から個の社会になることで孤独や不安に陥る人も増えるでしょう。
しかしこの時代にも励みになる言葉を松下幸之助翁は残しています。
松下翁は晩年、こうなることは運命で決まったいたというような、逆説的な言葉も残しているのです。
これは運命は決まっているのだから仕方がないという意味ではなく、盤石の構えで諦めずに進めば大丈夫、いかなる状況下でも臆せず弛まず努力するとで必ず目的地に到達するという巨視的な人生訓なのだそうです。

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