リスボンの広さと交通

 2020年現在、ポルトガル共和国の首都リスボンの中心部の人口は約54万人、周辺部と合わせても約300万人です。都市圏人口が1000万人を越えるパリやロンドンに比べると小さいですが、周辺部に広りつつある様子は車で郊外に向けて走ると実感します。今ではEU圏内で11番目に大きい都市圏になっています。

 中心部の人口54万人というのは、私が住んでいた東京都の杉並区とほぼ同じです。しかし大きく違うのは、バラエティに富んだ都市景観です。人口こそ杉並区と同じくらいと言えども、都市景観の変化は東京都をぎゅっと圧縮したくらいの印象を受けます。

 杉並区に住んでいた頃は、10分散歩しても景色が大きく変化する事はありませんでしたが、リスボンは10分も歩けばまるで別の場所に行ったかのように錯覚することがしばしば起きます。その理由は、統一感はあるものの画一的でない街並みと、中心部では坂や公園が多く、郊外では丘陵地帯に恵まれていることもあるのかも知れません。それだけに灯台下暗しで、近所にこんな場所があったのかと驚くことしばしばです。

 次にリスボン市内の交通機関ですが、中心部から延びるメトロ(地下鉄)、市内を縦横に走るトラム(路面電車)とバス、そして郊外に向かう一般の鉄道網が主要な公共交通手段となります。
 メトロ、トラム、バスはCarrisが運営、郊外に向かう鉄道はCP(Comboios de Portugal)が運営しています。
 
Viva Vigemという交通カードにチャージしておくと、こうした公共交通機関で共通に使えます。その他1日乗り放題券などがあるようですが、私どもも使ったことがないのでご興味がある方はガイドブックかネットでお調べいただければと思います。

 路面電車はモダンで大きな新型車両と小さくて可愛い旧型車両が混じって走っています。レトロな旧型車両でもWifiの文字が書かれている車両があり、古い仕組みに新しい技術を目立たずに乗せてゆく欧州流のスマートさを感じました。

 トラムは日常の足としても観光用にも使われていますが、日常の足と考えた際の欠点は速度が遅いということでしょうか。自動車などとの混合交通であるが故に仕方がないのですが、例えばE15をAlgesからCais do Sodreまでの全線を移動した場合、30分から40分くらいかかりますが、並行して走るカスカイス線の列車だと停車駅が少ない上に速度も速いので10数分しかかかりません。それぞれの特徴を活かして利用することをお勧めしま

 それからタクシーとUBERは日本よりはるかに料金が安いです。タクシーのサービスはドライバーによってばらつきがあるので、もっぱらUBERを利用しています。UBERは市内であればせいぜい長くて5分も待てば到着するし、登録したカードでチップも含めて支払いができるのでお釣りの心配もなく、ドライバーのマナーも良く嫌な思いをすることもほとんどないので大変重宝しています。

 拙宅は街の中心部から少し離れた住宅街にありますが、街が小さいので中心部のデパートまで約10分、空港まで20分という便利さです。家から出てものの3分で時速100キロ出せますから、本当にあっという間に目的地に着きます。朝晩の通勤渋滞はありますが、東京の比ではなく、ちょっと辛抱すれば解消することがほとんどです。

 国際空港は街の北部にあり、北風の時は旧市街の真上を縦断して旅客機が着陸します。今でこそジェット機のエンジン音は随分と静かになりましたが、かつてはかなりの騒音だったのではと想像します。以前大規模な新国際空港の建設計画がありましたが、経済的な理由と野鳥の保護を理由に中止になったようです。その代わり国際空港とは川を挟んで反対側にある軍の空港をLCC専門の空港にする計画を現地の新聞記事で目にしたことがありますが、その後計画がどうなったのか気になるところです。

 私が幼少期を過ごした高度成長期の東京には路面電車が走っていましたが、リスボンの路面電車は、当時ののどかな街の風景を再現してくれます。街の規模というのはこのくらいがほどよいサイズではないかと感じるようになった今日この頃です。

近郊形車両は日本と同じく2階建車両が使われています。

近郊形車両の2階席

Campolide(カンポリーデ)駅に進入する列車。改札はなく、タッチ式のカードリーダーのみ。Campolide : Calçada da Estação, 1070-025 Lisboa, Portugal

Campolide(カンポリーデ)駅付近の水道橋Aqueduto das Águas Livres

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