日本で世界でどう生きる(27) インターネットビジネス時代の詐欺師たち

今世紀に入ってから、インターネットを介したビジネスが急速に普及した。私も2000年頃にEコマース(電子商取引)に関する勉強会に参加した際に、その後に予測されるマーケットへの影響力の大きさを識者から知らされた。その後実際にアマゾンをはじめとするネット上の店舗がリアルの店舗を凌駕するようになり、勉強会で影響力を力説していた外資系コンサルタントの方の先見の明を改めて感じた。
私自身は電子商取引自体は時代の趨勢で、受け入れざるを得ない状況にあると思っている。実際に稀少本や古書、さらには趣味の品物を探す際に、リアルな店舗では不可能だった検索が可能になって重宝している。しかしそれとともに、インターネットを介するビジネス特有の詐欺行為が新たに芽生えたことを危惧する次第である。
最もわかりやすいのは、お金を支払っても商品を送ってこないケース。これは取引の仲介をする業者がしっかりしていれば、例えば商品の到着を確認してから支払うようなシステムにより解消することができる。しかし近頃非常に気になるのは、インターネットを介して詐欺商材を販売する者がネット上に跳梁跋扈していることである。優れた商材を販売している人もいるだけに、こうした人たちへの迷惑も計り知れない。こうした詐欺師が怪しい商材を販売することで、インターネットビジネスの信用を低下させ、なおかつ被害者が後を絶たないことを懸念する次第である。詐欺師の多くがいわゆるプロダクトローンチという手法で詐欺商材を販売している。第1話から始まり3回か5回くらいの動画をメール等で一定間隔で配信、動画の中で商品の魅力を自らが語る。その多くが販売者とインタービュアーとの対話介したやり取りの中で行われる。どう考えても非現実的な利益をいとも簡単に手に入れられるノウハウをまことしやかに語るのである。
大胆なのは商品を説明する本人やインタービュアーが、顔出しして説明している点である。ただし顔出ししている人物が販売者本人なのかはわからない。さらに名前は本名のこともあれば偽名を使っていることもあるようだ。商材は物販だったり、仮想通貨だったり、FX、あるいはギャンブルに至るまで様々である。簡単にできるとうたっているものの多大な労力を要したり、再現性に乏しい物販のノウハウなど多岐に渡っている。
こうした商材の販売は販売者自らのメールマガジン読者に向けて行われることもあれば、購読数の多いメールマガジンやLINEのID所有者に広告費を支払うことにより拡販をしている。中にはポンジスキームと呼ばれる詐欺があり、出資者から預かった資金を運用せず、出資者に配当しているかのように装い最後は破綻するようなものもある。ポンジスキームは数年あるいはそれ以上続くものもあり、長く続いていることで信用させた後に破綻するものもある。
このような詐欺行為に対して消費者庁もネット上で呼びかけを行っているようである。しかし法律の専門家によると、詐欺師たちの多くが刑事告訴を回避するためのノウハウまでを当初から仕組んでいるとのことである。
この世界が複雑なのは、他者の商材を誹謗中傷して自分の商品に誘導する仕組みを作っている者もいることである。真実であればともかく、善良な販売者まで餌食にされたのではたまったものではない。
詐欺師たちの中にはフェイスブックでも堂々と顔出しして、こうしたビジネスで得た利益で優雅な生活を楽しんでいることを自慢している者さえいる。私はこうした人物のメンタリティの中に大金に溺れる人間の弱さだけでなく、お金というものが人をここまで人間をコントロールしてしまうのだという恐ろしさを感じる次第である。さらに長引く日本の不況と、仕事に疲れ果てた人たちの不安な心理を詐欺師たちが巧み(27)に操作している姿を想像しないではいられない。
泣けなしのお金をはたいてこうした商材を購入した人たちの悲しみをよそに、うまいものを食べ、いい家に住み、高級車を所有するなど、物質的生活を謳歌している人物は己の悪行を猛省すべきと思うと同時に、司法と行政がこうした詐欺行為に対して十分な取り締まりをすることを期待する次第である。
いずれにしてもこうした人物には、いつかは天の裁きが下るものだと思っている。
(参考)
集団訴訟プラットフォーム MatoMa
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