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日本で世界でどう生きるか (21)

知り合いの弁護士事務所を訪れるたびに、自然と日本の世相についての話題になる。とりわけ深刻さを極めている政治の腐敗や経済の低迷についての話題が多い。とっくに辞任していて当然の閣僚が要職に就いたり、福祉が切り詰められ専守防衛に無用な装備を大量購入するニュースなどが日常茶飯事になっている現代日本。その一方でこうした状況に物言わぬ国民性も驚くばかりである。
彼はデフレで何とか生活ができているうちはこの状況が続くかもしれないが、いずれ自分たちの生活が立ち行かなくなったところでやっと声を上げるのではないかとため息を漏らした。

人間は急激な痛みや損失には反応するが、徐々に進行する変化にはなかなか気づかないものである。そして喉元過ぎれば熱さも忘れる性癖が、原発事故や大地震の教訓を忘れさせる。
日本経済の低迷は今だ続く中、低賃金の元でデフレからインフレに移行すれば、事態はさらに深刻さを極めるだろう。とりわけ東京五輪後の不況は考えるだけで恐ろしい。福島の原発事故の後遺症は今だ続いているばかりではなく、原発再稼働により日本のリスクはどんどん高くなっている。多くの国民が事態の深刻さに気づかない理由は国民性ばかりでなく、マスメディアの責任も大きい。福島原発事故で北米西海岸に届くほど太平洋の海洋汚染が広がっていることについても、海外のメディアが詳しく報じているのに対して、日本のメディアはあまりに無関心である。

山本七平氏は「空気の研究」の中で、戦艦大和が何故負け戦になるわかっている戦場に出撃していったかを論じている。多くの人がおかしいと思っているのに、現場でそれを止められない「空気」が何故醸成されるのか。その理由として物事に対する臨在感的把握、すなわち対象を遠くから客観的に眺める視点の欠如を挙げている。近代日本の危機に対する対策はあまりに近視眼的である。そしてそれに加えて、今日においては社会や政治に対する無関心が、それに拍車をかけているように思う。この無関心さはどこから生じたか。色々な理由は考えられるが、一例としてアメリカ型の消費経済、使い捨て文化と、そして人間の画一化を促す教育システムが背景にあるように思う。特に近年ではITによる新たなる情報化社会と、その裏腹にコミュニケーション不足、活字離れによるところも大きいのではないか。

私が物心ついた高度成長期には、地域で共用の小さなゴミ箱があって、そこに家庭ごみが集められて定期的に収集されていた。恐らく今だったら1家庭が出すゴミだけで一杯になってしまうくらいの大きさである。当時は牛乳もジュースもビールも、瓶詰めで提供され回収されていた。鉄製の缶詰やジュース缶があるだけで、ペットボトル、アルミ缶、レジ袋、樹脂製トレイは存在しなかった。当時からしたら今日の使い捨ての世の中は驚くばかりである。

そして当時の子供が学ぶ場所と言えば、公園や広場、空き地、そして父親の拳骨や説教、地域社会だった。

脳科学者の養老孟司氏が、テレビゲームで遊ぶ子よりも昆虫採集をする子の方が漢字をよく覚える、要は学習能力が高いことを述べられていた。要は昆虫採集の方がテレビゲームに比べてはるかに情報量が大きいからである。私自身、フライトシミュレーターから実機の操縦訓練に移行した際に、現実世界の情報量の大きさを肌身で実感した記憶がある。

洗面台に手を出すとセンサーが反応して水が出ることに慣れてしまった子が、水道栓をどのように操作して良いか戸惑うことがあると聞いて驚く今日。機械化やIT化で、生活スタイルが洗練され、時間や生産性が上がること自体は悪いことではない。しかしその余暇時間を得るために失ったもの、そして余暇時間がより人間らしい生活を獲得するために使われているかというと甚だ疑問である。より多くの耐久消費財購入やレジャーに消費するために、心身を蝕むほどに過酷な労働を強いられるのは本末転倒である。

さらには目先の仕事に追われて、物事を深く考える時間を知らず知らずに削ぎ取られ、政治や社会、他者への関心が薄れてしまうことは恐ろしいことである。特に決まった回答を求める現代の教育システム、受験システムは、子供の自由な発想や想像力を育むこととは反対方向に作用しているように思う。

自ら思考する習慣、他者や社会への関心、余暇時間を消費以外の何に使うか。少子化と不況が続く日本においては、こうしたことを今一度立ち止まって考える時期に来ているよう思う。

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