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日本で世界でどう生きるか(7)

 私は20代から30代の青年に出会う機会があるたびに、自分の人生に大きな影響を与えた本を紹介することにしている。膨大な書籍の中から良書を選び出すことの時間や労力、そしてその書籍と出会うことの影響を考えると、たとえお節介と言われても若い世代に対する義務と考えるからである。言うまでもなく限りある生命時間を費やする価値があると確信できる本に限ってのことである。自分自身も若い頃に上司や先輩から良書を紹介されて、人生観が大きく変わったのを経験している。

もうひとつの理由は、若い人に数多くの活字に触れて欲しいからである。先日もある営業マンに2冊の本を薦めたところ、早速アマゾンで購入して読んでくれたことが嬉しかった。彼は文章が難解だったので、読み進めるのにかなり苦労したと正直に語ってくれた。私も同じ歳の頃にこの本を読んだのだが、さほど難解とは感じられなかったので、昨今の活字離れが原因なのではないかとふと思った。

 このところ若年層のコミュニケーション能力の低下を痛感する場面に多々遭遇する。特にこちらの質問の意図を咀嚼することなく、あらかじめ用意された回答を即答されて閉口することが多い。こちらの質問の内容を理解し、それに相応しい回答をインタラクティブに発するのではなく、反射的に自分の言いたいことを押しつけてくる感覚にしばし驚きを禁じ得ない。ある大学の先生によると、最近の大学生は2つの係り言葉が挿入された文を読み解く力すら失せてきているとのことである。口語によるコミュニケーション能力の低下は、むしろ難解な長文に対する読解力の低下に由来しているのではないかとも思えてくる。とりわけ一部の若者がSNSやLINEで交わす切なくなるほど曖昧な表現を見るにつけ、これが口語も含めたコミュニケーション能力に少なからぬ影響を与えているのではないかと推測する次第である。さらに言えば、スマホやネット環境が、対面でのコミュニケーションの回数を必然的に減らしていることも背景にある大きな要因ではないかと考える。

何年か前に、若者が集まる席で、お互いがスマホでやりとりをして目の前の相手と直接言葉を交わすことのない不思議な光景を目撃した人の話を聞いたことがある。インターネットの発達により旧来の口語とも文語とも異なる、新しい日本語のコミュニケーションが芽生えてきたとも思えるのだが、その基礎となる国語力そのものの能力低下は、日本の将来を考えると危惧せざるをえない状況である。

同じく海外で英会話能力を身につけた若者が、何とも低俗なスラングをSNSに投稿するのを見て唖然とすることがある。恐らく英会話を習得した環境でそうした言葉が飛び交っていたと想像するのだが、母国語である日本語力が十分身についていれば必然的に品格の劣る言葉を避ける筈であろう。日本に住む外国人が、品格のない日本語を流暢に操った際の違和感を想像すれば、日本人が得意げに低俗なスラングを連発する滑稽さは自ずと理解できるはずである。

ずいぶん昔になるが、自分と同世代の外交官と言語能力について話を交わした記憶がある。彼は日本語も外国語も会話能力に長けているにもかかわらず、大切なのは文章力の方だと力説していた。当時は私は、言語のルーツは文字ではなく音であり、外国語を習得する際は音から学ぶべきとの確信が強かっただけに彼の主張を全面的に受け入れることができなかったのだが、今この歳になって彼の言わんとしていたことの奥深さを思い知った次第である。

このところ複数の解釈が可能な記事の見出しや、書いた本人しかわからない内容の文章を目にする機会が増えているように思う。外国語習得に熱心な割りには、海外の人と比べて言葉が通じない日本人に必要なのは、日本語力なのではないかと思う次第である。

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