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日本で世界でどう生きるか (11)

 先日来日した世界三大投資家のジム・ロジャースは、ビジネスクラスに乗ったのは40才を越えてから、つい最近まで「後ろの方の席」に乗ることが多かったそうである。女優のエリザベス・テーラーがエコノミークラスに腰掛けているのが目撃された話や、台湾の政府高官が私のようなものにはもったいないと言って、エコノミークラスでの移動に甘んじていたという話を聞いたことがある。
以下旅客機の客室とシートについて考えてみた。しょせんはカプセルホテルほどの空間についてのうん蓄を傾けるだけの話であることをお断りしておく。

昨年のことである。欧州便を予約していた航空会社から電話があった。ブッキングオーバーが発生したので他社便に変更できないかとの内容だった。
他社便に変更すると、20分早く到着できるメリットがあるとのこと。しかし理由があって丁重にお断りした。それは他社便のシートが流行りの「スタッガード式」だったからである。先方に理由を告げると納得してくれた。国際線をよくご利用になる方はご承知のことと思うが、スタッガードとは千鳥状という意味で、各シートがより個室に近い形でプライバシーが確保されている。私は家内と一緒に搭乗するので、このスタッガードはコミュニケーションがとりずらい上、独特の閉塞感があって好きになれないのである。

このところビジネスクラスとファーストクラスがどんどん「カプセルホテル化」さらには「個室化」している。移動中も黙々と仕事をするにはいいのかもしれないが、何とも無粋でやるせない。特に進行方向後ろ向きのシートなどは考えただけで気が重くなる。スタッガード以外にもヘリンボーン式というV字型配列があるが。こちらも整然としているものの、隣席の家内に声をかけずらいのが難点である。私の好むリクライニング型は、知る限りではルフトハンザ、ルフトハンザ傘下のスイスインターナショナル、LOTポーランド航空、タイ航空のA330とB747、アエロフロート、KLMオランダ航空などがあるが、これからはリクライニング式がどんどん少なくなると言われている。

一方でカプセルホテル化、個室化の流れはシンガポール航空やエミレーツを筆頭に躍進著しい。ここで原点に戻って考えてみると、旅の快適さの明暗を大きく左右するのは、横になって寝られるかシートがフルフラットか否かである。フルフラットでなくても、せめてA330のように約170度まで倒れてくれれば長距離をある程度快適に過ごせる。かつて南回りヨーロッパ線や南米線で28時間をエコノミークラスで耐えた経験を持つ私にとっては、旅の明暗は「横になれるかどうか」の1点に尽きる。英国人がドーバー海峡は大西洋より広いとたとえたのと同様、ビジネスクラスとエコノミークラスを隔てるカーテンは、冷戦時代の鉄のカーテンの如しである。

”横になれるかどうか”、重要なのはこれだけである。食通でもない私にとって、この1点に尽きる。

旅客機のシートのカプセルホテル化、個室化の前の飛行機のシートのトレンドはどうだったか。40年も前に遡るとビジネスクラスは存在せず、ファーストとエコノミーの2クラス、その差は新幹線のグリーン車と普通車の違い程度しかなかった。さらに1950年前後にさかのぼると、列車の寝台車のようなサービスがあったことに驚く。歴史は繰り返すと言うが、ファーストクラスの個室化はかつてマリリンモンローが来日した際の、ボーイング・ストラトクルーザー(B377)の再来ということなのだろうか。

厳密に言うと、80年代にも「寝台」は存在した。日本航空のファーストクラスに追加料金で利用するスカイスリーパーというのが一時期設けられた。B747の2階席に設けられたのだが、短命に終わった。
B747の2階と言えば、就航当初はファーストクラス客専用のラウンジだった。ボーイング社は機種の貨物室部分にもラウンジを設けるプランを発表したが、結局採用する航空会社はなかった。ファーストクラスラウンジはB747の登場以前にも、 B707やダグラスDC-8の機種部分にも存在した。ラウンジなど作らず、シートの余裕を増やした方が親切と思いきや、やはりその時代はラウンジを設けることに価値を見出していたのだろう。

さて先ほどの「横になれるかどうか」の話だが、エコノミークラスでも運がよければ可能になる場合があった。B747のエコノミークラスの中央部4列シートが空席の場合は、肘掛をはねあげることで横になれた。以前、チューリッヒから乗った日航機で、スチュワーデスが私をこの場所に誘導してくれたおかげで離陸直後から爆睡、目が覚めたらハバロフスク付近を飛んでいたという幸運に巡り合りあえた。このことにあやかって、翌年ヨハネスブルクからサンパウロまで乗ったいまはなきヴァリグブラジル航空のMD-11では、隣り合わせの2つのシートの肘掛を上げて、膝から先を通路側で折り曲げて寝ようと試みたが、見事に失敗した。一睡もできず、南大西洋の夜間飛行中にサービスされる、砂糖がたっぷり入ったブラジルコーヒーを飲みながら眠れぬ夜を過ごしたものだ。

旅客機のシートのフルフラット化や個室化が進む中、どうしても納得できないのが、ヨーロッパ内近距離国際線のビジネスクラスである。エコノミークラスの3名掛けの中央を塞いで2名掛けにしただけ、若干前後が広い程度の「なんちゃってビジネスクラス」。日本を出て欧州内での乗り継ぐ場合、経由地から先だけをエコノミークラスにしてもいいのだが、荷物が多い場合を考えると結局この「なんちゃってビジネスクラス」に甘んじてしまう。搭乗と降機が早い、料理のグレードが若干高い程度で、ビジネスとエコノミーを隔てるカーテンは、鉄のカーテンどころか薄っぺらのカーテンがますます薄っぺらに見える。日本時間の真夜中に、このシートで横になれず2、3時間を過ごすのは苦痛である。

欧州内短距離ビジネスクラスの料金はジムロジャースのような大富豪から見たら、無駄使いの極みと言われそうだ。そこで旅客機マニアにとっては、離陸前に操縦室の内部が時々垣間見れる瞬間があることを言い訳にするしかない。

私のような旅客機マニアにとってベストのシートは、操縦室のジャンプシート(補助席)である。911前、いや厳密に言うと99年の全日空機ハイジャック事件以降は、操縦室への入室は非常に厳しくなった。それまでは知り合いのパイロットに頼んで入室許可証をもらったり、たまたま非番の知り合いの乗員と乗りあわせて、操縦室で至福の時を過ごしたこともあった。98年に香港啓徳空港が閉じる際の最後の着陸は、マイルを奮発してファーストクラスを予約したものの、離陸と着陸はずっと操縦室の中にいたので客室を楽しむ時間はわずかだった。その頃はB747全盛期で、乗員訓練所のシミュレーターも含めると何度B747のコクピットにお世話になったかわからない。操縦室に呼ばれると、誠に申し訳ないことに、少々うんざりするくらいだったのを記憶している。

さて最後に「横になれるかどうか」の話に再び戻る。いっそのこと旅客機をモノクラスにして全席フルフラットシートにできないものか。2段ベッド、3段ベッドを客室で一杯にすればというアイデアが出るかもしれないが、緊急時の脱出時間の制限があるのでまず無理である。全席フラットシート化は、利益という点では航空会社の営業は悲鳴をあげるかもしれないが、エコノミークラスのシートで5時間以上のフライトはお年寄りでなくても少々身体にこたえるので何とかならないものか。プレミアムエコノミーなどという中途半端なのをやめて、エコノミークラスの料金をちょっとだけ高くして全席170度くらいのリクライニングシートにすることはできないのでだろうか。

そういえば学生時代、那覇から石垣島まで台湾の玉龍という客船の3等船室に乗って旅したことを思い出した。3等船室は雑魚寝である。

雑魚寝でもいいのだ、横になれさえすれば!

「横になれるかどうか」、「なんちゃってビジネスクラス」を航空会社はもう少し真剣に考えてもらいたい。特に還暦過ぎると、「横になれない」と「なんちゃって」は気が重いのである。

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